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冬の道路で命を守る!スタッドレスタイヤの重要性

 日本で作られているスタッドレスタイヤ、実は世界的に見ても非常に高い性能を持っています。そこには日本独自の気候が深く関係しています。
 冬も深まる今、スタッドレスタイヤの重要性について再認識していただくべく、解説していきます。

スタッドレスタイヤってそもそもどんなタイヤ?

 スタッドレスタイヤは氷雪上性能に特化したタイヤです。スタッド(スパイクピン・鋲)を持たない(レス)ためにスタッドレスタイヤと呼ばれています。
 スタッドレスタイヤは冬用タイヤであるスノータイヤ(ウィンタータイヤ)の一種であり、スノータイヤには他に「スパイクタイヤ」「オールシーズンタイヤ」「マッド+スノータイヤ」などがあります。

 スタッドレスタイヤであれば、タイヤの側面(サイドウォール)に「STUDLESS」と印字があり、オールシーズンタイヤやマッド+スノータイヤは「M+S」と印字されています。

 日本ではスパイクタイヤ粉じんの発生の防止に関する法律が1990年に施行されており、緊急自動車等の一部の例外を除いて公道上でスパイクタイヤを装着し走行することはできなくなっています。

スタッドレスタイヤの重要性とは?

 スタッドレスタイヤは氷雪路においてサマータイヤとは比べ物にならないほど高い性能を発揮します。
 2017年のJAF調べによれば、時速40kmでブレーキを踏んだ際、圧雪路においてはスタッドレスタイヤはサマータイヤの半分程である17mで止まることができるという結果が出ています。一方サマータイヤは30mも要しています。
 その差13mは乗用車約3台分、超大型トレーラー1台分に相当します。
 急ブレーキは本当の緊急時に踏むブレーキ。その制動距離が13mも違うのですから、氷雪路でのスタッドレスタイヤの重要性は一目瞭然です。

 またタイヤのゴムには得意な温度域があり、温度が高いとゴムは柔らかくなり、温度が低いと硬くなります。
 サマータイヤのゴムは7℃以上の気温で性能を発揮するように作られており(出典ミシュラン)、その気温を下回るとゴムが硬化し、本来のグリップ力を発揮できなくなります。
 スタッドレスタイヤのゴムは7℃以下の気温でもゴムが硬くならないように作られており、厳冬期でも車本来の性能を引き出すことができます。
 降雪や路面凍結の恐れがない地域にお住いの方でも、スタッドレスタイヤに交換する意義は十分にある、ということは覚えておいてほしいものです。

 なお、オールシーズンタイヤは-10℃〜30℃程の温度域を想定して作られたタイヤで、年間を通じて同じタイヤを使うことができます。
 積雪路、雨天時でも使用できるオールシーズンタイヤですが、タイヤのゴムがスタッドレスタイヤほど柔らかくないこと、トレッドパターンもスタッドレスタイヤほど氷雪を考慮されていないことから、冬期の性能はスタッドレスタイヤに一歩及びません。

 また、2017年にJAFが行った試験では、凍結路ではむしろサマータイヤに近い制動力しか得られないという結果が判っています。

 スノータイヤとしてオールシーズンタイヤを選ぶ人は、自分の使用状況に対してオールシーズンタイヤが適しているのか、一度確認することをオススメします。

スタッドレスタイヤの仕組み

 スタッドレスタイヤがサマータイヤと違うのは形状だけではありません。どのような仕組みで氷雪路での性能を生み出しているのか、見ていきましょう。

ゴム

 スタッドレスタイヤのゴムは前述のとおり、低温下でもゴムとしての柔軟性を失わないように作られています。それだけではなく、ゴムの中に気泡を含ませ(発砲ゴム)たり、ガラス繊維や特殊な素材をゴムに混ぜ込むことで滑りやすい路面への食い付きをよくするなど、各社が工夫を施しています。

深いトレッドパターン

 スタッドレスタイヤのトレッドに刻まれたパターンは、サマータイヤのものより深く複雑なデザインをしています。このトレッドパターンが雪面を踏みしめるとその形通りの凹凸(雪柱)が生まれ、これを蹴りだすことでグリップ力を得ています。(雪柱剪断力)

サイプ

 トレッド面にあるブロックに無数にある極小溝を、サイプと呼びます。サイプの役割はトレッドパターンと同じ雪柱剪断力を生み出すことともう一つ、氷雪路の表面の僅かな水分を吸い取ることにあります。
 氷雪路が滑るのは、タイヤと路面の間のごく薄い水の膜が摩擦力を低減させるからです。サイプはこの水の膜を吸い上げてしまうことで摩擦力を取り戻し、タイヤがスリップすることを防いでいます。

リブレット

 サイプよりもさらに微細で浅い縦溝構造をリブレットと呼びます。
 タイヤは製造工程の最後で、熱と圧力を加えて成型されます。その際、トレッドの表面に僅かに硬いゴムの層ができてしまうのです。このゴムの層は表面もツルツルしているため、新品時のタイヤのグリップ力は、そのタイヤが本来持つ性能より僅かに劣ってしまいます。
 ブリヂストンなど一部のタイヤメーカーがスタッドレスタイヤに施しているリブレット加工は、新品時から路面の水分を効率よく吸収し、タイヤがより路面に密着することで、装着した直後からスタッドレスタイヤ本来の性能を発揮させる効果があります。

なぜ国産のスタッドレスタイヤは優秀なのか

 その答えは、日本独自の気候にあります。
 雪が降ったあと、日中に溶けて水となり、夜間には凍る。悪名高いアイスバーンはこうして形成されるのですが、実はヨーロッパではむしろ珍しいのです。なぜなら、日本とヨーロッパでは雪質が大きく異なるため。日本の雪は湿気を多く含み溶けやすいのです。
 日本のアイスバーンは世界的に見ても過酷な路面なのです。

 日本で優秀なスタッドレスタイヤとは、ツルツルして硬い氷と、べちょべちょして柔らかい雪、相反する二つを制するタイヤです。国産タイヤメーカーはこのような難しい要求をクリアするため長年研究・開発を重ねて日々タイヤの性能を進化させています。

 一方で欧州産タイヤメーカーのスタッドレスタイヤが劣るかと言われればそうではなく、乾燥路での安定性やグリップ力に優れているという特徴があります。
 冬に高速道路をよく走る方は、敢えて欧州メーカーのタイヤを履くという選択肢を視野に入れてもいいかもしれません。

スタッドレスタイヤのデメリット

 いくつかありますが、要項としては、「スタッドレスタイヤは冬期用タイヤであるので、冬が明けたら履き替えるのが基本」であるというものです。

サマータイヤより乾燥路でのグリップ力は低い

 スタッドレスタイヤのゴムが柔らかいことや溝が深いことは前項で述べましたが、絶対的なグリップ力という点においてはこれらはマイナスになります。
 急激な力(急ブレーキや急カーブ時)が加わった際に、タイヤ自体が踏ん張る力にゴムやトレッドが負けてしまうのです。

サマータイヤより燃費性能や静粛性が劣る

 ゴムが柔らかく溝が深いということは、転がり抵抗が大きいということでもあります。燃費性能はほんの僅かの差しかありませんが、ロードノイズについてはかなりの人が体感できる差となって現れます。

サマータイヤより雨天に弱い

 JAFが2015年に行った試験によれば、同じ五分山溝で比較した場合、濡れた路面でのスタッドレスタイヤはサマータイヤより1.3~1.5倍程度、制動距離が伸びることがわかっています。
 これは時速60kmの場合3.6m、時速100kmの場合21.4mの差になります。

 スタッドレスタイヤは、素材や構造の工夫で路面の水を吸収するように作られていますが、雨天時のように路面に過剰に水がある場合、水を弾くことができずにタイヤと路面の間に水の膜ができ、滑ってしまうのです(ハイドロプレーニング現象)。

スタッドレスタイヤの寿命は4年

 サマータイヤの寿命については以前ご紹介しましたが、同じゴム製品である以上スタッドレスタイヤもサマータイヤと寿命は変わりません。

 またスタッドレスタイヤには、スリップサインの他に「プラットホーム」と呼ばれる、50%摩耗の目安を知らせる突起が存在します。
 前述したとおり、スタッドレスタイヤのトレッドパターンはサマータイヤとは違う特殊なものです。このトレッドパターンは摩耗度50%を境に急激に性能が低下します。
 そのため、一見して溝が深いように見えても、このプラットホームがブロックに近付いてきたら交換するようにしましょう。

スタッドレスタイヤの理想的な使い方とは?

 スタッドレスタイヤについて、サマータイヤと違ってデリケートな印象を持っている方も多いのではないでしょうか?
 実はそんなことはありません。適切な運用を意識すればキッチリ3〜4シーズンを使い切ることができます。
 ここではオススメの使い方を紹介します。

適切な空気圧

 車には空気圧の規定値がありますが、これは高すぎても低すぎてもいけません。
 空気圧が低すぎればタイヤの両側が、高すぎればタイヤの中央が偏って削れてしまいます。また空気圧が低いと燃費が、空気圧が高いとグリップ性能が悪化します。

タイヤローテーション

 タイヤは前後で減り方が違います。また駆動方式によってもどちらが削れやすいかが違います。
 正しくタイヤをローテーションすることで前後左右のタイヤの減り方を均等にし、寿命を延ばすことができます。

保管する際は日陰で!

 ゴム製品にとって紫外線は大敵です。絶対に日陰で保管しましょう。
 また、風雨に晒されることも、ゴム内部の油分を流出させ劣化を早める要因となります。タイヤカバーを装着するか、ない場合でも大きいビニール袋に入れ、口を縛って保管するのが理想的です。

 最も理想的な保管場所は、温度変化が通年で少ない、人間の居住空間です。このような環境で保管されたスタッドレスタイヤは、摩耗が少ない場合、6年を経過しても尚性能を維持できたとする人もいます。